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エアコン暖房は乾燥するのか?

年とともにお肌が乾燥に敏感になり、お風呂上がりの保湿は欠かせなくなってきました。特に何とか首まわり、手首、足首など。乾燥してくると肌がみるみる白くなってきます。もう若いころのようにはいかないんですよ、ええ。特に寒くて乾燥してるとつらいです。でもエアコンとかの暖房をつけると乾燥するって言いますよね!?なんで乾燥するんでしょうって考えてみます。乾燥しないお部屋の暖め方ってあるんでしょうか?

 

空気中にはどれくらいの水分が入っているの?

飽和水蒸気量という言葉を聞いたことがあるでしょうか?空気の中に水分が入っているのはお判りでしょうが、空気に取り込める水分の最大量は決まっているんです。水分が最大限まで入って、もう満たされててそれ以上は入れることができないよという状態を「飽和」といいます。飽和水蒸気量とは、ある条件の空気に最大限含まれる水分の量を示しているということになります。そして、飽和状態まで満たした水の量というものは空気の温度に比例して二次曲線的に増えていくのです。

飽和水蒸気量の曲線を見てみましょう。

図1.飽和水蒸気量

たとえば、気温が5℃の場合、1㎥あたりに取り込める水分の量は最大でも「6.8g」となります。温度を上げていくと二次曲線的に増加していき、なんと気温40℃では「51.1g」となり、10倍弱の水分を取り込むことができるんです。

で、飽和っていうくらいだから、もう空気にそれ以上水分は入らないんです、つまりその時の湿度は100%ということ。一方、人間の肌というのは常に汗や油分で湿っています。水分が付着している状態です。液体として水分が付着していて、まわりが乾燥していたら、いつでもそこから蒸発していける水分を保っているということです。肌が乾燥する、とは、肌にのっている水分が蒸発して、空気にもっていかれる量が多いか少ないかということになります。

なので、もし空気の水分量が飽和していたら、湿度100%である飽和水蒸気量であったなら、もう空気に水分を取り入れることができないのでお肌が乾燥することはないということになります。

100%未満であれば、まだまだ空気が水分を取り込めるので、近場にある水辺(お肌)から水を奪うことが可能、つまり肌が乾燥する状態に持っていけるということです。もちろん、湿度が低ければ低いほど、空気中に取り込める水分量の余裕が大きくなるので水辺からの水分を取り去る力が強い!

みなさんも湿度を気にしてみてはいかがでしょうか?

温度を上げると湿度はどうなるのか?

そこで図1から考えてみます。真冬に部屋の温度が5℃、湿度100%(飽和)になっているとしましょう。そこから加湿することなく(水分量を変えることなく)暖房をしていって、快適温度である25℃まで持ってくることを考えてみます。

図2.気温変化による水分の影響

気温5℃での飽和水蒸気量は、「6.8g」です(状態1)。1㎥あたりに6.8gの水分が含まれている状態です。

一方、気温25度での飽和水蒸気量は、「23.1g」にもなります(状態3)。1㎥あたりに23.1gの水分を取り入れることが可能です。しかし、ただ温度を上げただけなので1㎥あたりに含まれる水分量は変わらず6.8gとなっている(状態2)ため、まだまだ水分を取り込める状態になってしまいました。湿度を求めてみると、

\displaystyle R=\frac{水分量}{飽和水蒸気量}\cdot 100=\frac{6.8}{23.1}\cdot 100=29.4 %

5℃の部屋では湿度100%だったのに、25℃にあげたら湿度は29%まで下がってしまいました。のこり約70%もの水分をまだまだ取り込めることができます。その分を補おうと思って空気さんはどんどんあなたのお肌から水分を奪っていくことでしょう!

夏場にエアコンから水が出るけど、水分奪ってるんじゃないの?

そこで話は変わりますが、夏場にエアコンで冷房すると室内機からつながってるホースを通して室外に水が出てくるじゃないですか?私のまわりだけかわからないですけど、あれのイメージが、エアコンって運転すると水分を奪うんじゃないか!?って思ってる人がいると思うんですよ。そのイメージで冬にエアコンをかけるとエアコンが水を吸い取って室内が乾燥するんだ!って思っている人がいるんじゃないか!?

実は(実はというほどのことじゃないですが…)、冬の暖房でエアコンが空気の水分を奪っているわけじゃないんです、その証拠に冬はホースから水は出てきません。

で、先ほどの飽和蒸気曲線で夏場を想定した水分の変化を考えてみます。

室内の気温は35℃、湿度100%がスタートで、同じく水分量を変えないで気温を25度まで冷やすことを考えます。

図3.冷房時の水分量変化

気温35℃での飽和水蒸気量は、「39.6g」です(状態1)。1㎥あたりに39.6gの水分が含まれている状態です。

一方、気温25度での飽和水蒸気量は、「23.1g」にもなります(状態2)。1㎥あたりに23.1gの水分を取り入れることが可能です。しかし、今度は元の水分量よりも取り込める限界を超えてしまい、飽和水蒸気量よりもだいぶ上の方に行ってしまいました(状態3)。取り込める最大量が23.1gなんだからそれ以上は余剰分となってしまします。ちなみにありえないですが湿度を計算してみると、

\displaystyle R=\frac{水分量}{飽和水蒸気量}\cdot 100=\frac{39.6}{23.1}\cdot 100=171 %

となってしまいました。つまり、71%分の 39.6-23.1=16.5 g分が空気に取り込むことができず、あふれ出て、液体として滴り落ちることになってしまうんです。いわゆる結露というものです。実際は室内機内部の熱交換器にあるアルミフィンが冷たくなっており、そこで暑い空気中の水分が結露して、アルミフィンに水滴が付着し、その付着した水滴が大きくなってしたたり落ちて、それらを集めてホースで排出するということになっています。

暖房とは水分の動きが逆のようになってしまいました。つまり、エアコンから水が出てくるという現象は、冷房の時しか起こらない!ということです。暖房の時は、水分をあえて奪ったりしないので安心してください(?)

乾燥しない暖房方法とは?エアコンだから乾燥するってわけじゃない。

家族から乾燥すると嫌だからエアコンじゃなくてカーボンヒータを使えて言われて使っています。でもこれだけでも十分あったかい!

乾燥しない暖房方法とは?

今までの話でお判りのように、暖房する、という時点で空気は乾燥してしまうのです。これは避けられない自然の摂理なのです。エアコンだろうが、セラミックファンヒータだろうが、カーボンヒータだろうが同じです。温度を上げるという行為は、言い換えれば乾燥させる行為であるんです。

なので、暖房とは別に、加湿(水分をもってくる)する方法を用意するしかない。

よくファンヒータに加湿器もセットになってることありますがそういう理由ですね。

ただ、燃料を燃やした場合は別です。たとえば、石油ストーブなんかは燃料として炭化水素 C_xH_y で構成されていますので、炭化水素を燃やす(酸素と反応させる)と、基本的に二酸化炭素と水が出てきます。

aC_xH_y+bO_2\to cH_2O+dCO_2

(灯油自体がさまざまな炭化水素の集合体なので、係数は無視してください)

この反応により、灯油を1L燃やすと約1L程度の水分が出るといわれています。ただし、二酸化炭素 CO_2 も出るし、そもそも燃焼で酸素を消費するんで、酸素が薄くなる&CO_2 が濃くなるため、電気で温めるよりも定期的な換気が必要、空気が汚れるといわれるゆえんですね。

なのでみなさん、加湿器を買いましょう!